この本を読めば何がわかるの?―長期投資で大きな資産を築くための道しるべ
フィリップ・A・フィッシャー氏の著書『Common Stocks and Uncommon Profits(邦題:株式投資で普通でない利益を得る)』は、1958年に出版されて以来、多くの投資家に読まれ続けている成長株投資の古典的な名著です。この本を読むことで、投資家は「最小のリスクで資産を最大化する」ための具体的な投資法を学ぶことができます。
本書は、短期的な株価の上下に一喜一憂するのではなく、数十年にもわたり何十倍、何百倍にも成長する可能性を秘めた「究極の成長株」を見つけ出し、それを長期間保有し続けることが株式投資の王道であると教えてくれます。特に、その内容は専門家でなければ理解できないような難解な数式や専門用語を避け、平易な言葉で簡潔に書かれている点が特筆すべきです。そのため、投資経験の浅い初心者でも、フィッシャー氏の投資哲学の本質を理解し、実践への第一歩を踏み出すための指針を得ることが可能です。
この本を通じて、あなたは企業の本当の価値を見抜くための15の質問、公開情報だけでは得られない「生の情報」を収集するスカトルバット(聞き込み調査)手法、そしていつ買い、いつ売るべきかの明確な指針を学ぶことができます。また、多くの投資家が陥りがちな投資で失敗しないための5つの鉄則も示されており、長期投資で大きな資産を築くための道しるべとなる一冊です。
今日の話の流れ―フィッシャー流投資術を3つのステップで学ぼう
この記事では、フィリップ・フィッシャー氏の投資術を、長期投資でお金持ちになりたいと考える皆さんに分かりやすくお伝えするために、以下の3つのステップに沿って解説していきます。
- ステップ1:フィッシャー流・投資の考え方を知ろう
- ここでは、フィッシャー氏がどのような人物で、なぜ「成長株投資の父」と呼ばれるのか、彼の投資哲学の根幹をなす「スカトルバット(徹底的な情報収集)」や「優れた企業の長期保有」という基本戦略について理解を深めます。
- ステップ2:最重要ポイント!「本当に優れた企業」を見抜く15の質問
- フィッシャー氏が優良な成長株を選び出すために用いた具体的な「15の質問」を、事業の将来性、経営陣の能力と誠実さ、収益力と競争力という3つのカテゴリーに分けて詳しく見ていきます。
- ステップ3:いつ買い、いつ売る?フィッシャー流「売買の哲学」
- 株式の購入タイミング、売却すべき具体的な3つの理由、そして投資家が陥りやすい過ちについて、フィッシャー氏の教えを学びます。
この3つのステップを通じて、フィッシャー流投資術のエッセンスを掴み、あなたの投資を成功へと導くための強固な土台を築きましょう.
ステップ1:フィッシャー流・投資の考え方を知ろう
著者フィリップ・A・フィッシャーってどんな人?―「成長株投資の父」と呼ばれる理由
フィリップ・A・フィッシャー氏(1907年~2004年)は、20世紀前半から活躍したアメリカの著名な投資家です。彼は96年間の人生のうち約75年間を投資に捧げました。大恐慌(1929年)といった困難な時代を乗り越え、成長株への投資で大きな成功を収めています。1928年にはスタンフォード大学のビジネススクールを中退し、大恐慌直前の1929年から投資業界でのキャリアをスタート、1931年には独立して自身の投資顧問会社「フィッシャー&カンパニー」を設立しました。
フィッシャー氏は「成長株投資の父」とも称され、あのウォーレン・バフェット氏に多大な影響を与えた人物として知られています。バフェット氏は自身の投資哲学について「85%はグレアム、15%はフィッシャー」と語っており、フィッシャー氏の成長株に対する考え方を取り入れていることを公言しています。
フィッシャー氏が「成長株投資の父」と呼ばれる理由は、単に成長株に投資していたからではありません。彼の真の革新性は、当時の主流であった財務数値を基にした定量的な分析だけでなく、企業の質や将来の成長性といった定性的な要因を体系的に分析する手法を確立したことにあります。
彼の投資手法の効果は、その驚異的な実績が証明しています。例えば、彼はモトローラ株を約50年間保有し続け、数百倍のリターンを獲得しました。他にも、ダウ・ケミカル、テキサス・インスツルメンツ、コーニングといった銘柄への投資でも大きな成功を収めています。これらの銘柄は全て、フィッシャー氏が徹底した調査により「本当に優れた少数の会社」として選び抜いた企業です。
投資の核心は「かぶとむし」?―徹底的な情報収集「Scuttlebutt(スカトルバット)」とは
フィッシャー氏の投資手法の核心の一つに、「スカトルバット(Scuttlebutt)」と呼ばれる徹底的な情報収集活動があります。これは、企業の公式発表や財務データといった表面的な情報だけでなく、その企業の顧客、競合他社、元従業員、業界関係者など、あらゆる情報源から「生きた情報」を丹念に集めることを意味します。
フィッシャー氏は、スカトルバットについて「実際に顧客や元従業員、競合他社などにヒアリングを行い、『生の情報』を得る」と説明しています。彼は、まるでカブトムシが土を掘り返して餌を探すように、企業のあらゆる側面を深く掘り下げて調査することの重要性を説きました。たとえば、「業者(仕入先)と顧客からは、取引先企業の真の姿を学ぶことができる」と述べています。
彼の著書では、企業訪問時にどのような質問をすべきかといった具体的なアドバイスも記されており、これはスカトルバットの実践方法を示唆しています。「周辺情報利用法」とも呼ばれるこのアプローチは、投資判断において極めて重要なプロセスと位置付けられています。
現代の個人投資家も、以下の方法でスカトルバット手法を実践できます。
- ネット検索:「企業名+評判」「企業名+口コミ」「企業名+離職率」などで情報収集する。
- SNS調査:TwitterやLinkedInなどで企業や製品に関する生の声をチェックする。
- オンライン情報のクロスチェック:投資系ブログやYouTubeなどで多角的な分析を確認する。
- 人脈活用:友人・知人の中に当該企業の関係者がいればヒアリングを行う。
- 現地確認:可能な範囲で店舗訪問や製品体験を実施する。
これらの地道で徹底的な調査こそが、本当に優れた企業を見つけ出すための鍵であるとフィッシャー氏は説いています.
フィッシャーが目指したたった一つのこと―「本当に優れた企業」を「長期間」保有する
フィリップ・フィッシャー氏の投資哲学は非常に明確で、その目標は「本当に優れた企業(卓越した成長株)」を見つけ出し、それを「長期間」保有し続けることでした。彼は、「十年も上がり続け、何十倍、何百倍になる『究極の成長株』を探し、保有し続けることが株式投資の王道だ」と述べています。
フィッシャー氏にとって、短期的な株価の上下や10%~20%程度の小さな利益は重要ではありませんでした。彼が追求したのは、数年間で株価が10倍近くにもなるような、企業の持続的な成長からもたらされる大きなリターンです。そのため、「株を購入したとき、それが正しく行われていれば、それを売る時期はほとんどない」とも語っており、一度確信を持って投資した企業とは、運命共同体のように長く付き合うことを理想としていました。
この「自分が理解できる少数の素晴らしい会社を探しあて、あまりリスクをとらずに長期保有し続ける」という手法は、彼の投資スタイルの根幹をなすものです。彼は、個人投資家の場合、異なる銘柄に20以上分散しているならば、資産運用能力がない証拠であり、10〜12銘柄程度が通常は良い数だと述べています。これは、徹底的な調査には時間がかかること、質の高い企業は数が限られること、そして確信度の高い銘柄に集中することでより大きなリターンを狙えるという理由からです。フィッシャー氏は「真に並外れた優良企業を見つけ出し、市場の浮き沈みがあっても持ち続ける方法のほうが、安く買って高く売る方法よりずっと儲かった」と語っており、投資において最も大切なのは優良企業を長く握り続けることだと説いています.
ステップ2:最重要ポイント!「本当に優れた企業」を見抜く15の質問
フィリップ・フィッシャー氏は、傑出した成長株を見極めるために、投資家が自問すべき「15の質問(ポイント)」を提唱しました。これらの質問は、企業の将来性、経営陣の質、そして収益構造という多角的な視点から企業を評価するための強力なフレームワークです。ここでは、読者の理解を助けるため、3つのカテゴリーに分けて紹介します.
【カテゴリー1】その会社、10年後も成長してる?(事業の将来性を見抜く質問)
このカテゴリーの質問は、企業が今後も持続的に成長できるかどうか、その事業の将来性を見極めることを目的としています。フィッシャー氏は、第1カテゴリーは「事業の成長力」に関する質問であると述べています。
- 質問1:その会社の製品やサービスには、今後数年以上にわたって売上を大幅に伸ばせるだけの十分な市場があるか?
- 企業が提供する製品やサービスが、一過性のブームではなく、長期的に需要が見込める市場に位置しているかを確認します。フィッシャー氏は「少なくともあと5~6年」や「今後5年」といった具体的な期間を意識していました。これは「当該企業は今後数年間にわたって売上を大幅に伸ばし得るような商品またはサービスを持っているか?」という問いです。現代では、市場規模が年率10%以上で成長している業界にいるか、製品・サービスが社会的なトレンドに合致しているか、海外展開の余地があるかなどを見極めるポイントとなります。
- 質問2:経営陣は、現在の主力製品ラインの成長性が鈍化したとしても、引き続き会社全体の売上を伸ばすために、新しい製品開発や製造プロセスの改善を行う決意を持っているか?
- 市場の変化に対応し、持続的な成長を追求する経営陣の意欲と能力を問います。現状に満足せず、常に革新を求める姿勢が重要です。これは「既存製品の成長が頭打ちになったときでも、新製品や新プロセスの開発を経営陣は継続する意志があるか?」という問いです。真の成長企業は、現在の主力製品に頼るだけでなく、常に次の成長エンジンを開発し続けます。
- 質問3:その会社の研究開発活動は、規模と比較して効率的か?
- 研究開発への投資が、実際の成果(新製品や技術革新など)に結びついているか、その効率性を評価します。単に多額の資金を投じているだけでは不十分です。フィッシャー氏は継続的イノベーション能力として「R&D支出比率、新製品パイプライン、特許・提携実績」を重視しました。これは「研究開発(R&D)費用が企業規模に対して効果的か?」という問いでもあります。
- 質問4:その会社には、平均以上の販売体制があるか?
- 優れた製品やサービスも、それを顧客に届ける強力な販売力がなければ意味がありません。効率的で強力な営業組織の有無を確認します。フィッシャー氏は営業力を「リードを顧客化し、アップセルや新市場拡大を推進する力」として評価しました。これは「優れた営業組織を有しているか?」という項目でもあります。現代では、顧客満足度調査の結果や営業人員一人当たりの売上高、新規顧客獲得数と既存顧客維持率などが見極めポイントとなります。
- 質問11:その会社には、同業他社よりも優れている可能性を示唆する、その業界特有の何か(特許、ブランド力、ニッチ市場での強みなど)があるか?
- 競争優位性の源泉となる、他社にはない独自の強みを持っているかを確認します。これは「業界特有の他の側面が、企業が競争相手に対してどれだけ優れているかを示す重要な手がかりを与えるか?」という質問であり、フィッシャー氏は「小売ならリース条件、テックなら特許保護など」の業界特有要因を重視しました。これは「業界特有の優位性を生む要因はあるか?」という項目でもあります。
- 質問13:近い将来、会社の成長のために株式発行による資金調達(増資)を行う必要があるか?もし行う場合、既存株主の利益が大幅に希薄化される恐れはないか?
- 成長のための資金調達が必要な場合でも、それが既存株主の価値を大きく損なうものであってはなりません。これは「将来的に企業の成長が、既存株主の利益を大幅に打ち消すほどの株式融資を必要とするか?」という質問です。
【カテゴリー2】この人たちになら任せられる?(経営陣の能力と誠実さを見抜く質問)
このカテゴリーでは、企業を率いる経営陣の能力、人間性、そして株主に対する誠実さを見極めます。フィッシャー氏は「わたしたちが投資すべき会社とは、並外れた能力を持つ経営者の指導のもとに「ものごと」を進めていく企業である」と述べています。第2カテゴリーは「経営陣や組織の質」を問う質問群です。
- 質問7:その会社の労使関係は良好か?
- 従業員の士気が高く、会社と従業員が良好な関係を築けている企業は、生産性の向上やイノベーションが生まれやすい環境にあります。フィッシャー氏は「高賃金や低い離職率により、優秀な人材を引き留め、イノベーションを促進するか」を重視しました。これは「優れた労働・人事関係を持っているか?」という質問です。現代では、従業員満足度や離職率、労働争議の履歴などが見極めポイントとなります。
- 質問8:その会社は、幹部社員との間に良好な関係を築いているか?
- 経営トップだけでなく、その下の経営幹部層が能力を発揮できる環境が整っているかを確認します。組織としての強さが重要です。フィッシャー氏は経営陣関係の質について「CEOと幹部の信頼・協調体制、成果主義の報酬体系など、経営気候の良さ」を評価基準としました。これは「優れた幹部関係を持っているか?」という質問です。
- 質問9:経営陣に深みがあるか?
- ワンマン経営ではなく、優秀な経営陣が層厚く揃っているかを確認します。これは「経営に人材の幅と深み(層の厚み)はあるか?」という問いにも含まれます。または「企業には管理の深み(depth)があるか?」という質問です。次世代のリーダー育成に力を入れているかも重要です。
- 質問12:その会社は、利益という点で短期的な視点だけでなく、長期的な展望を持っているか?
- 目先の利益にとらわれず、数年先、十数年先を見据えた長期的な戦略に基づいて経営が行われているかを見ます。これは「短期的な見通しか長期的な見通しを持っているか?」という質問です。
- 質問14:経営陣は、事業が順調な時には投資家に対して積極的に情報開示する一方で、問題が発生したり期待外れの結果になったりすると、途端に口をつぐんでしまうようなことはないか?
- 経営陣の透明性と誠実さを測る質問です。良い情報だけでなく、悪い情報も適切に開示する姿勢が、長期的な信頼関係の構築には不可欠です。これは「うまくいっているときは投資家に対して自由に語るが、問題が起こったり期待が外れたりしたときに『沈黙』を守るようなことはないか?」という質問です。
- 質問15:その会社の経営陣は、本当に誠実か?
- 経営陣の倫理観や、株主を含む全てのステークホルダーに対する真摯な姿勢を問います。短期的な利益追求に走らず、長期的な視点で企業価値向上を目指す誠実さが求められます。フィッシャー氏は「株主資本を信託とみなし、不正や私的流用を排する高い倫理観」を経営者の必須条件としました。これは「議論の余地がないほど誠実か?」という質問です。
【カテゴリー3】ちゃんと儲ける仕組みはある?(収益力と競争力を見抜く質問)
このカテゴリーの質問は、企業が持続的に利益を生み出し、競争優位性を保つための具体的な仕組みを持っているかを探るものです。第3カテゴリーは「収益性・競争力」に関する質問です。
- 質問5:その会社は、高い利益率を得ているか?
- 持続的な成長のためには、十分な利益率を確保していることが重要です。これは「価値ある利益率を持っているか?」という質問です。フィッシャー氏は、低利益率の企業は景気後退で大きくダメージを受ける可能性が高く、持続的な高成長を支えるにはまず「儲かる仕組み」が不可欠と考えました.
- 質問6:その会社は、利益率を維持し、さらに向上させるために何をしているか?
- 現状の利益率に満足せず、コスト削減努力や高付加価値化など、利益率を改善していくための具体的な施策を講じているかを見極めます。これは「利益率を維持または改善するために何をしているか?」という質問です。
- 質問10:その会社は、コスト分析と会計管理をきちんと行っているか?
- 自社のコスト構造を正確に把握し、適切な会計処理を行うことは、効率的な経営の基礎となります。これは「コスト分析と会計管理をどれほどうまく行っているか?」という質問です。または「原価計算やコスト管理、経理体制はしっかりしているか?」という問いでもあります。
これらの15の質問に一つひとつ答えていくことで、その企業が単なる「良い会社」なのか、それとも長期的に莫大な利益をもたらす可能性を秘めた「並外れた会社」なのかを見極めることができるのです. フィッシャー氏は、「財務諸表だけでなく、マネジメントの質や企業文化などの無形要因を詳細に分析し、長期的に企業価値を形成する力を見極める」ことをこれらの質問の目的としています.
ステップ3:いつ買い、いつ売る?フィッシャー流「売買の哲学」
優れた企業を見つけた後、投資家が次に直面するのは「いつ買い、いつ売るか」という問題です. フィッシャー氏はこの点についても、明確な哲学を持っていました.
「いつ買うか?」―焦りは禁物。最高のタイミングは年に数回しか来ない
フィリップ・フィッシャー氏は、株式の購入タイミングについて、株価の上下に一喜一憂するのではなく、より長期的な視点を持つことの重要性を説いています. 彼は「ある値段になったら株を買うというのではなく、何月何日になったら買う」といったように、価格水準よりも、その企業が投資対象として熟した「時期」や「タイミング」を重視する姿勢を示唆しています. また、「価格にこだわればチャンスを逃す」とも述べており、本当に優れた企業であれば、多少の価格変動に神経質になるべきではないと考えていました.
フィッシャー氏は、経済データに基づく市場タイミングを拒否し、市場全体が大きく動揺しているときや、その企業に一時的な不運が訪れたが、長期的な成長見通しに変化がない時こそが絶好の買い場だと考えていました。こうした機会は、年に数回、あるいは数年に一度しか訪れないといいます。彼は「優良株を安く買う最良の機会は往々にして一般投資家が怖がっているときに来る」と述べています。
市場全体の大きな下落を正確に予測することは極めて困難であるとしつつも、フィッシャー氏は「ありふれた会社のなかから本当に突出した会社を区別することは、恐らく90%の確率で可能だと思う」と述べ、市場の動向よりも個々の企業の質を見抜くことに注力すべきだと考えていました。重要なのは、常に買う準備をしておき、「その時」が来たら大胆に行動する勇気を持つことです。「買うのは数年間かけて計画的に行うべき」という彼の言葉は、短期的な値動きで判断するのではなく、長期的な視点で冷静に買い向かうことの重要性を示唆しています.
フィッシャー氏が推奨する買いタイミングとしては、具体的に以下の3つが挙げられます。
- 一時的に業績が悪化して株価が下落した時:業界全体の一時的な不振や、新製品の開発遅延など、短期的な要因による業績悪化の場合です。優良企業でも避けられない一時的な困難期がチャンスとなります。
- 新規事業が軌道に乗る前の試行錯誤の時期:将来有望な新規事業への先行投資期間であり、市場がまだその価値を十分に評価していない段階です。短期的には利益を圧迫するが、長期的には大きな成長をもたらす可能性があります。
- リストラを着実に進めて成果が出てきているのに株価がそれを織り込んでいない時:効率化施策の効果が業績に現れ始めた段階で、市場がまだその変化を十分に評価していない期間です。構造改革の成果が今後の収益改善につながることが見込める状況です。
フィッシャー氏は、避けるべき投資行動として「買い値のわずかな差に固執しない」ことを挙げています。実際の事例として、「35.5ドルで取引されていた株式を35ドルで買おうとして50ドル節約しようとした投資家が、結果的にその後25年間で株価が500ドル以上になり、少なくとも46,500ドルの利益を逃した」話が紹介されています。この教訓は明確です:本当に優れた企業であれば、多少高く買っても長期的には十分なリターンが期待できるということです.
株価が上がったから売るのは間違い?―フィッシャーが教える「売るべき3つの理由」
フィッシャー氏は、「どれだけ割高であっても有望な成長株を売ってはならない」とまで述べており、一度選び抜いた優れた企業の株式は、基本的に長期保有することを推奨しています。株価が上昇したという理由だけで安易に売却することは、将来得られたであろうさらなる大きな利益を逃すことになりかねません.
彼は、「本物の成長企業には『売り時など存在しない』」と断言しています。株を売る理由は、主に以下の3つに限定されます。
- 投資対象を選択する時点で判断を誤っていたと気づいた場合。
- 当初の分析や評価が間違っていたことが判明した場合は、速やかに売却して損失を最小限に抑えるべきです。これは「最初の調査にミスや思い込みがあった場合」にあたります。
- 時の経過とともに企業が変化し、フィッシャー氏の「15のポイント」を以前のように満たさなくなってしまった場合。
- 企業の事業環境や経営方針が変化し、もはや優れた成長株とは言えなくなったと判断される場合です。業界環境の根本的な変化、競合他社の技術革新による競争力の喪失、経営陣の交代による企業文化の悪化などがこれにあたります。これは「経営陣の劣化や成長鈍化などで魅力が失われた場合」にあたります。
- もっと有望な成長株に乗り換える場合。
- 現在保有している銘柄よりも、明らかに将来性が高く、より大きなリターンが期待できる別の投資機会が見つかった場合です。ただし、これは慎重な比較検討が必要です。フィッシャー氏自身、この理由で株を売ることはほとんどなかったと言います。これは「その企業の成長余力が業界平均並みに下がったとき」にあたる場合もあります。
フィッシャー氏の考えによれば、「株を購入したとき、それが正しく行われていれば、それを売る時期はほとんどない」のです。株価が上がったからという理由での売却は、将来得られるはずだった、より大きな利益を逃すことに繋がると彼は警告しています.
なぜ「株価上昇」は売却理由にならないのでしょうか? フィッシャー氏は、ある架空の企業XYZを例に説明しています。
「XYZ社は長年にわたって15の評価基準を満たし続け、一般的な株式の2倍の株価収益率(PER)で取引されている。同社が今後5年で利益を2倍にする予測を発表したとき、一部の投資家は『現在の株価は将来の利益を先取りしており割高だ』と判断するかもしれない。しかし、この判断には誤りがある。XYZ社が同じ経営方針を続ければ、5年後にはさらに新しい製品群で利益を拡大しているはずだ。ならば、なぜこの株が5年後も一般的な株式の2倍のPERで取引されないと考えるのか?」
この例が示すように、真に優れた企業は時間の経過と共に価値を増大させ続けるため、一時的な株価の高さを理由に売却すべきではないのです. フィッシャー氏は「株価の高騰は本質の問題ではない」「市場全体の下落を予想して手放すのも本末転倒」などと述べ、短期的なノイズに振り回されないよう強調しました。
投資家が陥りがちな罠―フィッシャーが警告する「やってはいけない10の過ち」
フィリップ・フィッシャー氏は著書の中で、投資家が避けるべき具体的な過ちについても言及しています。これらは、長期的な資産形成を妨げる可能性のある一般的な落とし穴です. 特に『株式投資で普通でない利益を得る』の中では、「投資家が避けるべき5つのポイント」として以下が挙げられています. これらは「やってはいけない過ち」の主要なものと言えるでしょう.
- 創業間もない会社は買わない.
- 事業が軌道に乗る前の不確実性が高い企業への投資は、リスクが大きいとフィッシャー氏は考えていました. 事業実績や業績が十分に確立されておらず、経営陣の実力が未知数で、市場での地位が不安定なためです. これは「プロモーション企業に投資しない」という過ち番号1にあたります.
- 「店頭株(現在の新興市場株のようなもの)」だからという理由だけで良い株を無視しない.
- 市場の規模や知名度だけで判断せず、企業の質そのものを見るべきだということです. これは「OTC取引の株を無視しない」という過ち番号2にあたります.
- 年次報告書の「雰囲気」が良いというだけで株を買わない.
- 報告書の美辞麗句やデザインに惑わされず、実質的な内容を吟味することの重要性を説いています. これは過ち番号3にあたります.
- PER(株価収益率)が高いからといって、必ずしも今後、収益がさらに増えることを示しているわけではないことを理解する.
- PERはあくまで指標の一つであり、それだけで将来の成長性を判断するのは危険です. これは過ち番号4にあたります.
- 買値のわずかな差に固執しない.
- 本当に優れた企業であれば、購入価格の小さな違いにこだわりすぎて投資機会を逃すのは避けるべきです. これは過ち番号5にあたります.
これらに加え、フィッシャー氏は「行き過ぎた分散投資はしてはいけない」とも警告しています. 過度な分散投資は、知らない企業にまで手を出すことになり、リスクヘッジではなく管理が煩雑になるだけだと考えました. 厳選した少数の優良株に集中投資することが、最小のリスクで資産を最大化する方法だと彼は説いています. これは過ち番号6にあたります.
また、「多数派の真似をしない」ことも重要な原則です. 市場の流行や群集心理に流されず、独自の分析と判断に基づいて投資を行うべきだと説いています. これは過ち番号10にあたります.
その他にも、「戦争の恐怖でうろたえてはいけない」(過ち番号7)、「些細なことで売り急いではいけない」、「型にはまった情報だけを鵜呑みにしてはいけない」(数字の裏側を読め)、「買う時は株価だけでなく、そのタイミングもよく考えなさい」(過ち番号9)、「利益率や配当利回りだけにこだわってはいけない」、「せめて買値に戻るまで」と塩漬けにしないといった警告があります.
フィッシャー氏は「株価がどう動くかより、時間をかけて企業を理解する忍耐が利益をもたらす」と述べ、常に独自の視点を持つことを重視しました. 要は、流行やノイズに踊らされることなく、自分自身の調査と判断を信じるべきだということです.
これらの過ちを避けるだけでも、あなたの投資成績は大きく改善されるはずです.
まとめ:フィッシャーの教えを、あなたの投資に活かすために
今日からできる第一歩―企業の「ファン」から「オーナー」の視点へ
フィリップ・フィッシャー氏の投資哲学から学ぶべき最も重要なことの一つは、投資対象企業に対する視点の転換です。単にその企業の製品やサービスが好きだという「ファン」の視点から一歩進んで、自分がその企業の「オーナー」であるという意識を持つことが求められます。
これは、フィッシャー氏が提唱する「15の質問」を実践する上でも不可欠な姿勢です。企業の将来性、経営陣の能力と誠実さ、収益構造といった点を深く掘り下げて分析することは、まさにオーナーシップの視点そのものです。そして、「自分が理解できる少数の素晴らしい会社を探しあて、あまりリスクをとらずに長期保有し続ける」というフィッシャー氏の戦略は、付け焼き刃の知識ではなく、深い理解と確信に基づいた投資を促します.
今日から、気になる企業に対して「もし自分がこの会社のオーナーだったらどう考えるか?」という問いを立ててみましょう。それは、あなたが「消費者」や「ファン」から「オーナー」へと変わるための、記念すべき第一歩となるでしょう. まずは手持ち企業の事業内容をじっくり調べ、自分の言葉で説明できるようになるところから始めましょう.
目先の株価に惑わされない。「時間」を味方につける長期投資の本当の意味
フィッシャー氏の教えの中心には、常に「長期的な視点」があります。「十年も上がり続け、何十倍、何百倍になる『究極の成長株』を探し、保有し続けることが株式投資の王道だ」という彼の言葉は、短期的な市場のノイズに惑わされず、企業の根本的な価値と成長力に目を向けることの重要性を力強く示しています。
多くの投資家が日々の株価変動に心を奪われがちですが、フィッシャー氏は「投資家は決して10%や20%の小さな利益にではなく、何年間もかけて10倍近くになるような株価の成長にこそ興味をもつべきだ」と戒めています. また、「頻繁に売り買いすれば儲からない」とも指摘しており、短期売買の非効率性を説いています.
「時間」は、優れた企業にとっては成長を促す最大の味方となります。フィッシャー氏は「大きな利益を得るには忍耐が必要で、株価がどう動くかよりも時間が味方になる」と説いています。優れた企業の株を保有し、その成長を見守ること、市場のノイズから解放され、どっしりと構えて資産を育てるという、長期投資の本来の姿です.
フィッシャー氏の投資哲学を学ぶことは、この「時間」を味方につける長期投資の真髄を理解することに他なりません。目先の利益追求ではなく、企業の成長と共にじっくりと資産を育てるという意識を持つことが、普通でない利益を得るための鍵となるでしょう. フィッシャー氏の知恵を学び、時間を味方につけることで、あなたも「普通でない利益」を手にすることができるはずです.

