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国民健康保険料を安くする方法(個人事業主)


目次
  1. はじめに:なぜ国民健康保険料を見直すべきか
  2. 国民健康保険料の基本をおさらい
  3. 方法1:所得をコントロールして保険料の“ベース”を下げる
  4. 方法2:家族・世帯構成を見直して均等割・平等割を抑える
  5. 方法3:減免・軽減制度をしっかり活用する
  6. 方法4:申告タイミング・申請書類の準備を最適化する
  7. 方法5:業界特化の健康保険組合(健保組合)に加入する
  8. 方法6:理事報酬型サービスを活用して協会けんぽに加入する方法
  9. 方法7:方法6のリスク回避策として法人設立や協会けんぽ(社会保険)への切り替え
  10. おまけ:サラリーマンの「副業」を活用して社会保険料を抑える
  11. 投資初心者向けヒント:節約した分をどう増やすか
  12. おわりに:今日からできる2つのアクション

はじめに:なぜ国民健康保険料を見直すべきか

個人事業主として頑張っている皆さん、こんにちは。事業が軌道に乗って収入が増えてくると、国民健康保険料の負担がどんどん重くなってきたと感じている方も多いのではないでしょうか。国民健康保険料は、事業の成長とともに増加し、毎月の支出の中でも大きな割合を占めることがあります。例えば、東京に住む年収400万円の個人事業主で、配偶者と子供1人がいるモデルケースの場合、国民健康保険料は所得に応じて計算されるため、かなりの金額になる可能性があります。

この国民健康保険料は、基本的に前年の所得に基づいて計算されるため、所得が増えるほど翌年度の保険料も高くなる傾向があります。さらに、会社員が加入する健康保険では会社が保険料の半分を負担してくれるのに対し、個人事業主が支払う国民健康保険料は全額自己負担です。この全額自己負担という仕組みが、負担感を大きくする要因の一つです。

もし、この保険料の負担を少しでも減らすことができたら、その分のお金を将来のための貯蓄や投資に回すことができます。年間で数十万円の節約ができたとすれば、それを継続的に運用することで、将来大きな資産を築く可能性も秘めています。

この記事では、国民健康保険料の仕組みを簡単におさらいしつつ、保険料を合法的に安くするためのさまざまな方法を、高校生にも分かるように分かりやすく解説します。節約できたお金をどう増やしていくかについても触れますので、ぜひ最後まで読んで、ご自身の状況に合った最適な方法を見つけてみてください。

国民健康保険料の基本をおさらい

国民健康保険(略して「国保」と呼ばれることが多いです)は、市区町村が運営している医療保険制度です。会社員が加入する健康保険とは異なり、個人事業主やフリーランス、無職の人などが加入します。

国保の保険料は、主に以下の要素で計算されます:

  • 所得割: 前年の所得金額に応じて計算される部分です。所得が多いほど、この部分の保険料は高くなります。
  • 均等割: 加入者一人ひとりに定額でかかる部分です。世帯の加入者数が多いほど、この部分の合計額が増えます。
  • 平等割: 一世帯あたりにかかる定額の部分です。
  • 介護分: 40歳から64歳までの人が対象となる、介護保険制度のための保険料です。

このように、国保には会社員が加入する健康保険にある「扶養」という考え方がありません。そのため、ご家族もそれぞれ被保険者として保険料がかかり、世帯主がまとめて支払う義務があります。

保険料の計算のもとになる「所得」は、原則として前年の所得です。具体的には、確定申告で申告した前年の所得情報が、その年の6月頃に市区町村に連携され、その年の7月から翌年6月までの国民健康保険料に反映されます。

方法1:所得をコントロールして保険料の“ベース”を下げる

国民健康保険料の所得割は、前年の所得に基づいて計算されます。ですから、所得を適切に減らすことが、保険料を安くする最も直接的な方法の一つです。

必要経費を漏れなく計上して課税所得を減らす

個人事業主の所得は、売上から事業に必要な「必要経費」を差し引いて計算されます。事業に関係する支出は、漏れなく経費として計上することがとても重要です。経費を多く計上すれば、所得が減り、結果として国民健康保険料の所得割も安くなります。

どんなものが経費になるかというと、例えば、仕事で使う文房具や消耗品、お客様との打ち合わせの飲食代(接待交際費)、事業用の研修費、自宅を事務所として使っている場合の家賃や光熱費の一部などです。ただし、個人的な食事代や健康保険料、所得税、住民税などは経費になりません。

青色申告控除・各種所得控除の活用

確定申告をする際に「青色申告」を選ぶことで、「青色申告特別控除」という大きな控除を受けることができます。きちんと帳簿をつけているなどの条件を満たせば、最大で65万円を所得から直接差し引くことができます。これにより、国民健康保険料の計算のもとになる所得(賦課標準額といいます)を大幅に減らし、保険料を安くする効果が期待できます。

また、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金なども所得から差し引くことができる「所得控除」の対象です。こうした控除を忘れずに適用することで、所得税や住民税だけでなく、国民健康保険料の負担も軽減できる可能性があります。

臨時収入や副業収入の扱い方による影響

個人事業主として、本業以外にアルバイトをしたり、別の副業で収入を得たりすることもあるでしょう。これらの収入は、原則として本業の所得と合算されて、国民健康保険料の計算のもとになります。収入が増えれば、当然、翌年度の保険料が上がる可能性があります。

ただし、副業の種類によっては影響が異なります。例えば、アルバイトによる給与収入は、年間55万円以下であれば、給与所得控除によって所得が0円とみなされ、国保料に影響しない場合があります。また、株式投資や不動産投資といった「投資所得」は、原則として社会保険料の計算には影響しません。

方法2:家族・世帯構成を見直して均等割・平等割を抑える

国民健康保険料は「世帯単位」で計算されるため、ご家族構成や住民票上の世帯の分け方によって、保険料が変わる場合があります。

扶養に入る/扶養を外れるタイミング

もしご家族の中に会社員がいて、その方が社会保険(会社員の健康保険)に加入している場合、ご自身の年間収入が一定額(多くの場合は130万円未満)であれば、その方の社会保険の「被扶養者」になることができます。扶養に入ると、ご自身の健康保険料の負担がなくなります。ただし、国民年金については扶養の制度がないため、ご自身で別途国民年金保険料を支払う必要があります。

事業の収入が増えて年間130万円以上になりそうな場合、扶養から外れてご自身で国民健康保険や国民年金に加入する必要が出てきます。収入が増えるのは嬉しいことですが、社会保険料の負担も増えるため、収入管理をしっかり行い、年収130万円の壁を超えないように仕事を調整したり、経費を適切に計上して所得を調整したりといった工夫を検討する人もいます。

兄弟姉妹・親を扶養に入れる際のメリット・デメリット

国民健康保険には扶養の概念はありませんが、所得税や住民税の計算においては、一定の所得要件を満たす親や兄弟姉妹を「扶養親族」とすることで、扶養控除という所得控除を受けることができます。これにより、世帯主(あなた)の課税所得が減り、結果として国民健康保険料の所得割が安くなる可能性があります。

世帯分離(世帯を分ける)による効果と注意点

同じ家に住んでいても、住民票上の世帯を別にすることを「世帯分離」といいます。これは、特に収入の少ない親と同居している場合などに、国民健康保険料や介護保険料の負担を減らす目的で検討されることがあります。例えば、親御さんが年金暮らしで所得が少ない場合、世帯分離をすることで親御さんの世帯が低所得者向けの保険料軽減制度の対象となり、世帯全体の保険料が安くなる可能性があります。

ただし、世帯分離には注意点もいくつかあります:

  • 住民票上の手続きが必要になります。
  • もしご家族が会社員の健康保険の扶養に入っていた場合、世帯分離によって扶養から外れ、その方の健康保険料負担が発生する可能性があります。また、扶養していた方の勤務先から出ていた扶養手当や家族手当がなくなることもあります。
  • 医療費が高額になった場合に、同じ世帯の医療費を合算して自己負担上限額を計算できる「高額療養費制度」の世帯合算ができなくなります。
  • 手続きが煩雑になる場合があります。
  • 生計が完全に分離していることの客観的な根拠が必要になる場合があります。

世帯分離が有利になるかどうかは、ご家族の所得状況や住んでいる市区町村のルールによって異なります。安易に行うと、かえって保険料負担が増えることもありますので、メリットとデメリットをしっかり確認し、慎重に検討することが重要です。

方法3:減免・軽減制度をしっかり活用する

国民健康保険には、所得が低い世帯や特別な事情がある世帯のために、保険料を安くしたり、免除したりする制度があります。条件に当てはまる場合は、積極的に活用しましょう。

自治体ごとの所得基準による軽減要件の確認

前年の世帯の合計所得が一定の基準よりも低い場合、国民健康保険料の均等割や平等割が、自動的に7割、5割、2割のいずれかで安くなる制度があります。この軽減制度は、所得の申告をしていれば自動的に適用されることが多いですが、申告をしていないと対象にならないことがあるので注意が必要です。

この所得基準は、住んでいる市区町村や世帯の人数などによって異なります。例えば、東京都世田谷区の場合、令和6年度の7割軽減の基準は「43万円 + 10万円 ×(給与所得者等の数 – 1)」以下などと定められています。ご自身の所得が対象になるかどうかは、住んでいる市区町村のウェブサイトで確認するか、窓口に相談してみましょう。

災害時・失業時など特例的な減免申請

もし、災害で大きな被害を受けたり、病気や怪我で働けなくなったり、事業を廃止・休止したり、失業したりといった特別な事情で収入が著しく減ってしまった場合、申請することで国民健康保険料を安くしてもらえる制度があります。

こうした減免制度の条件や申請方法は、住んでいる市区町村によって異なります。申請が必要な制度なので、対象になる可能性がある場合は、早めにお住まいの市区町村の国民健康保険の窓口に相談することが大切です。申請が遅れると、減免が過去に遡って適用されないこともあります。

収入激減・高齢世帯向けの軽減パターン

特定の状況にある方には、他にも軽減措置があります。例えば、出産を控えている国民健康保険の加入者には、出産予定日の6ヶ月前から届け出ができ、出産(予定)日を含む月の1ヶ月前から4ヶ月間(双子などの場合はもっと長く)保険料が免除される制度があります。また、所得の低い高齢者の世帯や、会社を倒産・解雇などで辞めた非自発的失業者の方に対しても、保険料が軽減される特例措置が設けられている場合があります。

方法4:申告タイミング・申請書類の準備を最適化する

国民健康保険料は前年の所得で決まるため、確定申告の時期や内容、そして手続きに必要な書類を準備することも、保険料の最適化には関係があります。

確定申告提出時期と保険料反映のタイムラグ

確定申告は、通常2月16日から3月15日までの間に行います。この確定申告で申告した所得の情報は、その年の6月頃に市区町村に届き、7月から翌年6月までの国民健康保険料に反映されます。

もし収入が大きく減った場合でも、このタイムラグがあるため、実際の所得よりも高い保険料をしばらくの間支払うことになる可能性があります。

“前年所得”を意識した保険料ランクの見せ方

国民健康保険料は前年の所得で決まるので、将来の保険料負担を考えて、年間の所得を計画的に管理することも有効です。例えば、大きな収入が見込まれる年は、経費を漏れなく計上したり、青色申告控除などの所得控除を最大限活用したりして、課税所得を抑える工夫が考えられます。ただし、事業の実態に合わないような不自然な所得の変動は、税務署から指摘を受けるリスクもあるため注意が必要です。

必要書類をそろえてスムーズに申請するコツ

減免制度の申請や、国民健康保険組合への加入など、保険料に関する手続きをする際には、所得証明書や事業内容が分かる書類など、さまざまな書類が必要になります。どんな書類が必要か事前に確認しておき、すぐに提出できるよう日頃から準備しておくと、手続きをスムーズに進めることができます。

方法5:業界特化の健康保険組合(健保組合)に加入する

個人事業主やフリーランスでも、住んでいる市区町村の国民健康保険の代わりに、特定の業界や職種の人だけが加入できる「国民健康保険組合」(略して「国保組合」)という健康保険を選ぶことができる場合があります。

業種別健保組合とは何か

国保組合は、同じ種類の事業や仕事をしている人たちが集まって作られた健康保険のグループのようなものです。市区町村の国保と大きく違うのは、所得の金額にかかわらず保険料が一定だったり、所得に応じた段階的な金額設定になっていたりすることが多い点です。

加入可能な代表例

国保組合にはさまざまな種類があります。例えば、医師や税理士、建設業、理容美容業など、特定の業種ごとに組合が存在します。

動画編集者なら「文芸美術国民健康保険組合」

動画編集など、著作物に関わる仕事をしている個人事業主の方は、「文芸美術国民健康保険組合」という国保組合に加入できる可能性があります。この組合は、文芸、美術、著作活動を行っている個人事業主向けの健康保険組合で、動画編集も「著作的要素のあるクリエイティブ職」として認められるケースが多いと言われています。組合の会費は25,700円(2025年6月時点)。家族分は15,400円。介護保険料(満40歳~64歳の被保険者1人あたり)は月6,100円。

保険料率のイメージと一般国保・協会けんぽとの比較

国保組合の保険料は組合によって異なりますが、所得に関わらず定額の場合が多いです。そのため、所得が高い個人事業主にとっては、所得に応じて保険料がどんどん上がる市区町村の国民健康保険よりも、保険料を安く抑えられる可能性があります。

モデルケースである所得400万円の個人事業主の場合、所得に比例する市区町村国保の保険料よりも、文芸美術国保のような定額の保険料の方が安くなる可能性が高いと考えられます。

ただし、国保組合にもデメリットがあります:

  • 市区町村国保と同様に、扶養の概念がありません。家族もそれぞれ保険料がかかるため、ご家族が多い場合は市区町村国保より高くなる可能性もあります。
  • 収入が少ない場合でも保険料は固定のため、市区町村国保のような低所得者向けの軽減措置がありません。
  • 加入できる業種や条件が限定されています。
  • 組合によっては、入会金や年会費が別途かかることもあります。

ご自身の仕事が対象となる国保組合がないか、保険料や給付内容、加入条件などを調べて比較検討することが重要です。

方法6:理事報酬型サービスを活用して協会けんぽに加入する方法

一部で提供されているサービスとして、個人事業主が一般社団法人などの役員(理事)になり、そこから役員報酬を受け取ることで、会社員が加入するような社会保険(協会けんぽなど)に加入するというアプローチがあります。

サービスの仕組み:一般社団法人の理事として所属し、定額役員報酬で協会けんぽに加入

この仕組みでは、個人事業主は自分の事業を続けながら、並行して一般社団法人などの非常勤理事になります。そして、その法人から役員報酬という形で毎月決まった金額の給与を受け取ります。法人は社会保険に加入する義務があるため、役員であるあなたも健康保険と厚生年金に加入できるようになります。

社会保険料は、受け取る役員報酬の金額(標準報酬月額)に基づいて計算されます。そのため、役員報酬を低い金額に設定することで、所得に応じて計算される国民健康保険料よりも、社会保険料の負担を抑えることを目指します。

月額負担とメリット(保険料が固定化、厚生年金による年金増加)

この方法のメリットの一つは、保険料が役員報酬に基づいて決まるため、事業の所得が大きく変動しても、保険料が急激に上がる心配がない点です。また、会社員と同じように厚生年金に加入できるため、国民年金だけの場合よりも将来受け取れる年金額が増える可能性があります。さらに、協会けんぽなどの社会保険には、国民健康保険にはない傷病手当金(病気や怪我で働けないときの収入補償)や出産手当金といった手厚い保障があります。条件を満たせば、配偶者や子供を扶養に入れることもでき、家族分の保険料負担がなくなります。

モデルケース(所得400万円、配偶者と子供1人)の場合、国民健康保険料は扶養家族がいると高くなりますが、社会保険の扶養制度を活用できれば、健康保険料と厚生年金保険料の合計額が国民健康保険料よりも安くなり、年間で20万円から30万円程度の削減につながる可能性があると示唆されています。

【リスク説明】

ただし、この方法はメリットがある一方で、いくつかのリスクも伴います。

  • 年金事務所・協会けんぽから実態調査・加入資格取り消しの可能性: この仕組みは、実質的に個人事業主である人が、形式的に法人の役員という立場を使って社会保険に加入する形に見えることがあります。もし、年金事務所や協会けんぽから「事業の実態がないペーパーカンパニーだ」「役員報酬が実態に見合わず不自然に低い」と判断された場合、社会保険の加入資格が取り消されてしまうリスクがあります。その場合、さかのぼって本来支払うべきだった国民健康保険料や国民年金保険料を一度に請求される可能性があります。
  • 「理事」としての法的責任や税務署による再判定リスク: 一般社団法人の理事になるということは、その法人の運営に対して法的な責任を負うということです。また、税務署から役員報酬の金額が妥当かどうかのチェックが入ったり、事業の内容に対して改めて税金をかけられたりするリスクもゼロではありません。
  • 将来の給付(年金・傷病手当金など)が低額になる可能性: 社会保険料は役員報酬の金額に基づいて決まります。保険料を抑えるために役員報酬を低く設定した場合、将来受け取れる厚生年金の金額や、病気や怪我で働けなくなったときに受け取れる傷病手当金などの金額も、その低い報酬額に基づいて計算されるため、低くなってしまう可能性があります。短期的な保険料削減と、長期的な年金や保障のバランスを考える必要があります。
  • 退会タイミングを誤ると無保険期間や二重払いのリスク: このサービスをやめる(退会する)際に、社会保険の資格を失う手続きと、国民健康保険に改めて加入する手続きをスムーズに行わないと、一時的に健康保険がない期間ができてしまったり、間違って二重に保険料を支払ってしまったりするリスクも考えられます。

この方法は、高所得の個人事業主で、社会保険の手厚い保障や厚生年金に魅力を感じる場合に検討する価値がありますが、こうしたリスクを十分に理解した上で、慎重に判断する必要があります。

方法7:方法6のリスク回避策として法人設立や協会けんぽ(社会保険)への切り替え

方法6のようなサービスを利用する際のリスクを避けつつ、社会保険に加入してメリットを得たいと考えるなら、ご自身で会社(法人)を設立するという方法があります。

個人事業主→法人化して協会けんぽに加入するメリット

個人事業主が事業の規模を大きくし、法人を設立することを「法人化」または「法人成り」といいます。法人を設立すると、原則として社会保険への加入が義務付けられます。これにより、あなたが法人の役員や従業員となり、社会保険(健康保険と厚生年金)に加入することになります。

法人化して社会保険に加入することのメリットはたくさんあります:

  • 社会保険料負担の最適化: 役員報酬の金額に応じて社会保険料が決まるため、この役員報酬の金額を適切に調整することで、所得全体に保険料がかかる国民健康保険よりも、社会保険料の自己負担分を抑えられる可能性があります。会社員の社会保険料は会社と個人で半分ずつ負担する「労使折半」なので、全額自己負担の国民健康保険料と比べて負担感が減ることもあります。
  • 厚生年金への加入: 国民年金に加えて厚生年金にも加入できるため、将来受け取れる年金額が増え、老後の生活が安定しやすくなります。
  • 手厚い保障: 会社員の健康保険(協会けんぽなど)には、国民健康保険にはない傷病手当金や出産手当金といった手厚い給付があります。もし病気や怪我で働けなくなっても、収入が補償されるので安心です。
  • 社会的信用の向上: 法人になることで、取引先や銀行からの信用が高まり、事業をさらに大きくしたり、お金を借りたりしやすくなる場合があります。
  • 節税メリット: 法人税の税率が所得税よりも低い場合がある。役員報酬を経費にでき、給与所得控除も使える。退職金を経費にできる。赤字の繰越期間が個人事業主より長い。

法人化のコスト(設立費用・維持費)と手続きの流れ

法人化には、いくつかの費用がかかります。会社の種類にもよりますが、設立するのにかかる費用は、株式会社なら約20万円〜25万円、合同会社なら約6万円〜10万円程度です。

また、法人を作った後も、維持するための費用がかかります。例えば、法人住民税の均等割という税金は、会社が赤字でも最低年間7万円程度はかかります。さらに、法人の会計や税金の手続き、社会保険の手続きなどを専門家(税理士や社会保険労務士)に依頼する場合、その費用もかかります。

手続きとしては、会社のルールを決める書類(定款)を作成したり、法務局に設立の登記を申請したり、税務署や社会保険事務所に届出をしたりといった流れになります。

協会けんぽ加入の仕組みと保険料の目安

法人になると、役員として自分に給与(役員報酬)を支払う形になります。この役員報酬の金額をもとに、「標準報酬月額」というものが決まり、その金額と住んでいる都道府県ごとの保険料率を使って、健康保険料と厚生年金保険料が計算されます。そして、計算された保険料は、会社(法人)とあなた(役員)で半分ずつ負担することになります。

例えば、東京に住む年収400万円の個人事業主が法人化し、役員報酬を月額30万円に設定したとします。令和6年3月時点の東京の協会けんぽの保険料率は、健康保険が合計9.98%、厚生年金が合計18.3%です。月額30万円の報酬の場合、健康保険料は約29,940円、厚生年金保険料は約54,900円となり、合計で約84,840円です。このうち、半分にあたる約42,420円があなた自身の負担、残りの半分が法人(会社)の負担となります。全額自己負担の国民健康保険料と比較して、自己負担額が安くなる可能性があります。

どのような年収・報酬設計で「協会けんぽのほうが安い」のか

一般的に、個人事業主の所得(事業所得など)がある程度の金額を超えると、所得に比例して高くなる国民健康保険料よりも、役員報酬を抑えて社会保険に加入した方が、自己負担額が安くなる傾向があります。

例えば、ソースにある東京23区、所得900万円の個人事業主の場合、国民健康保険料が年間102万円、国民年金が年間19万円でした。もし会社員として給与を格安に設定すれば、健康保険は年間8万円、厚生年金は年間19万円で済み、法定保険全体で年間94万円も削減できるという例が示されています。

モデルケースである所得400万円の場合、社会保険に切り替えることで、年間20万円から30万円程度の保険料削減が期待できるとされています。ただし、これは扶養家族の人数などによって変動します。

法人化が本当に有利になるかどうかは、ご自身の事業の所得、ご家族構成(扶養家族がいるか)、法人設立・維持にかかるコスト、そして社会保険(特に厚生年金)に加入することのメリットなどを総合的に比較検討する必要があります。

おまけ:サラリーマンの「副業」を活用して社会保険料を抑える

これは個人事業主だけでなく、会社員の方にも関係する話です。会社員として働きながら副業をする場合にも、社会保険料の負担を抑えるという考え方があります。

会社員としてのメイン業務を維持しながら、副業を個人事業化するメリット

会社員として働いている方の多くは、勤務先で社会保険(健康保険と厚生年金)に加入しています。この社会保険料は、原則として勤務先から受け取る給与の金額に基づいて計算されます。そして、この社会保険制度は、二重に加入するということが基本的にはありません。

つまり、あなたが会社員として社会保険に加入していれば、たとえ副業として個人事業を始めて、そこで収入が増えたとしても、その副業収入によって会社員としての社会保険料が増えることはありません。副業の所得に対する税金(所得税や住民税)は増えますが、社会保険料はメインの会社員としての給与に基づいて決まるからです。

この仕組みを利用して、会社員としての給与は社会保険の最低加入条件を満たす程度に抑え(これは現実的には難しいことが多いですが)、その分、個人事業でしっかりと稼ぐことで、社会保険料の負担を増やさずに収入全体を増やしていくという戦略が考えられます。これは「会社員+個人事業主」というダブルの立場で、良いとこ取りをするという考え方です。

副業収入が一定以下であれば「被扶養者」のまま社会保険料がかからない

これは主に、会社員である配偶者の扶養に入っている方が、個人事業として副業を行う場合の話です。前述の通り、年間収入が130万円未満であれば、扶養に入ったまま健康保険料の負担なく健康保険の保障を受けることができます。国民年金についてはご自身で支払う必要がありますが、健康保険料がかからないだけでも、社会保険料の負担を大きく減らすことができます。

メイン業務の稼働量を調整しつつ、扶養要件を満たし続けるポイント

配偶者の扶養に入りながら副業を行う場合、年間の収入が130万円以上になると扶養から外れてしまうため、この収入の壁を意識した働き方や、前述の経費計上などの所得コントロールが重要になります。月々の収入を管理したり、年間の収入計画を立てたり、年末に仕事量を調整したりといった工夫をしている人もいます。ただし、収入を無理に抑えすぎると、長期的に見てご自身のスキルアップやキャリア形成に不利になる可能性もあるため、バランスを考えることが大切です。

投資初心者向けヒント:節約した分をどう増やすか

国民健康保険料の負担を減らすことができたら、手元に残るお金が増えますね。この節約できたお金を、ただ使うのではなく、将来のために賢く増やしていくことを考えてみましょう。

保険料を下げた“余剰資金”の活用イメージ

例えば、年間10万円の保険料節約に成功したとします。これは毎月約8,000円の支出が減るということです。この月8,000円を、そのまま貯金したり、投資に回したりすることで、将来の資産形成に大きな差が生まれてきます。

リスクを抑えた少額投資のポイント

「投資」と聞くと難しそう、怖い、というイメージを持つ人もいるかもしれません。でも、最近は少ない金額から始められる投資がたくさんあります。例えば、100円や1,000円といった少額から投資を始められるサービスもあります。これなら、もし損失が出ても金額は少なく済みますし、気軽に投資を始めることができます。

投資でリスクを抑えるための基本的な考え方に、「長期・積立・分散」というものがあります。

  • 長期: 短い期間の値動きに一喜一憂せず、長い目で見て資産が増えることを目指します。
  • 積立: 毎月決まった金額を積み立てて投資する方法です。これにより、価格が高い時は少しだけ買い、安い時はたくさん買うことになり、平均の購入価格を抑える効果が期待できます。
  • 分散: 一つのものだけに投資するのではなく、色々な国や種類の資産(例えば、日本の株、外国の株、債券など)に分けて投資することです。こうすることで、もしどれか一つの価値が下がっても、他のものでカバーできる可能性があり、全体のリスクを減らせます。

こうした考え方に基づいた投資方法として、投資信託(たくさんの人から集めたお金を専門家がまとめて運用してくれるもの)や、毎月決まった額を自動で積み立てる積立定期預金などがあります。特に投資信託は、少額から手軽に分散投資ができるので、投資が初めての人にもおすすめです。また、iDeCoやNISAといった、投資の利益にかかる税金が優遇される国が作った制度を活用することも有効です。

おわりに:今日からできる2つのアクション

まずできる2つのアクションはこちらです:

  1. 家計簿を確認して国保料を試算してみる: まずは、今あなたが毎月・毎年どれくらいの国民健康保険料を払っているか確認してみましょう。そして、ご自身の所得やご家族の人数から、おおよその保険料がどう計算されているかを理解してみましょう。市区町村のウェブサイトで保険料をシミュレーションできる場合もあります。
  2. 自治体の軽減制度・業界健保組合の加入要件をチェックする: ご自身の所得が、市区町村の低所得者向け軽減制度の対象にならないか調べてみましょう。また、あなたの仕事の業種で、文芸美術国保のような国民健康保険組合に加入できないかどうかも調べてみてください。

国民健康保険の制度は少し複雑ですが、仕組みを理解し、利用できる制度や方法を知っておくことで、負担を大きく減らせる可能性があります。もし、手続きや判断に迷うことがあれば、税金のことなら税理士さん、社会保険のことなら社会保険労務士さんといった専門家に相談することも考えてみてください。

国民健康保険料を賢く最適化して、事業と個人の将来をより豊かにしていきましょう。