はじめに:なぜ財務指標が大切なの?
日本株に長期投資を考える上で、どんな会社に投資するべきか判断するのは難しいですよね。たくさんの情報があって、どこを見たら良いのか迷ってしまう方もいるかもしれません。でも、安心して投資するために、企業のことをしっかりと理解することはとても大切です。企業の「成績表」のようなものを見ることで、その会社が今どんな状況なのか、そして将来どうなりそうなのかを知るヒントが得られます。
長期投資では、短い期間の値動きに一喜一憂するのではなく、企業の成長や安定性をじっくり見極めることが成功の鍵となります。将来のための資産形成、例えば老後資金や教育資金など、長い目で見た目標を達成するためには、財務がしっかりしている会社や、効率的に利益を上げている会社を選ぶことが重要になります。
企業の健康状態を知るためのツールの一つが、「財務指標」です。財務指標は、企業の決算書にあるたくさんの数字を組み合わせて計算されるもので、会社の「稼ぐ力」や「借金の状況」「株価の評価」などを分かりやすく示してくれます。例えるなら、健康診断の数値のようなものです。体温や血圧、コレステロール値などをチェックすることで、体のどこが健康で、どこに注意が必要かが分かりますよね。財務指標も同じで、いくつかを見ることで、企業の強みや弱点が見えてくるのです。
この記事で解説する5つの財務指標は、数ある指標の中でも特に重要で、初心者の方でも理解することで、日本企業の分析力がぐっと高まります。これらの指標を理解し、活用することで、より根拠に基づいた投資判断ができるようになります。これから一緒に、その「成績表」の読み方を学んでいきましょう。
1. ROE(自己資本利益率)で「稼ぐ力」を知る
ROEの定義と計算式
まず最初に知っておきたい指標は、ROE(Return on Equity:自己資本利益率)です。ROEは、会社が株主さんから預かった大切な資金(自己資本)を使って、どれだけ効率よく利益を稼ぎ出したかを示す指標です。株主の視点から見ると、自分が出資したお金がどれくらいのリターンを生んでいるのかが分かるので、非常に重要と言えます。
計算式は次のようになります。
$$ \text{ROE}(%) = \frac{\text{当期純利益}}{\text{自己資本}} \times 100 $$
ここでいう「当期純利益」は、会社が1年間で稼いだ最終的な利益のことです。「自己資本」は、会社の資産の中で、借金など返済する必要のない、株主からの出資金や過去の利益の積み重ね(利益剰余金)のことです。つまり、この計算式からは、自己資本100円に対して何円の利益を上げたか、が分かります。ROEが高いほど、少ない自己資本で効率的に利益を上げているということになります。
ROEの目安と分析ポイント
ROEの一般的な目安としては、8%~10%以上が良いと言われることが多いです。さらに、10-15%で良好、15%以上なら非常に優秀と評価されることもあります。しかし、この数字はあくまで一般的な目安です。なぜなら、ROEの適正な水準は、会社がある「業種」や「成長段階」によって大きく違うからです。
例えば、IT企業やコンサルティング会社のように、大きな工場や設備があまり必要ない業種は、もともと自己資本が比較的少なく済むため、ROEが高くなる傾向があります。一方で、電力会社や鉄道会社、重厚長大産業のように、高額な設備投資がたくさん必要な業種は、自己資本も大きくなる傾向があるため、ROEは低めに出ることが多いです。ですので、ROEを見る時は、同じ業種の他の会社と比較することがとても大切です。
ROEが高いことは良いことですが、見る時にはいくつか注意点もあります。一つは、「財務レバレッジ」の影響です。会社が銀行からの借入(負債)をたくさん使うと、自己資本が相対的に小さくなるため、計算上ROEが高く見えてしまうことがあります。これは、テコの原理のように、借入金(他人資本)を使って利益を増やすことで、自己資本に対する利益率(ROE)を高める手法です。ROEが高い理由がこの「財務レバレッジ」によるものなのか、それとも「本業でしっかり利益を稼いでいる」からなのかを見極めるためには、後で説明する自己資本比率やROAといった他の指標と合わせて見ることが重要です。また、特別な利益や損失があった年のROEは一時的に高くなったり低くなったりすることがあるので、過去数年間のROEの推移を見て、安定して高い水準を保てているかを確認することも大切です。
2025年の日本市場におけるROEの動向
2025年の日本市場では、ROEが特に注目されています。東京証券取引所が上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営」、つまり株主が納得できるような利益を上げることを求めており、その中でROEの向上は重要な経営課題となっています。企業側も、株主への還元(配当を増やす、自社株を買い戻すなど)を意識した経営を行う会社が増えており、これもROEの改善につながります。
例えば、ソースによると、トヨタ自動車のROEは13.28%、ソフトバンクグループは10.55%と、主要な企業でも10%を超えるROEが観測されています。また、より成長性の高い企業では非常に高いROEを達成している例もあります。VTuber事務所を運営するAnycolorという会社の2025年4月期予想ROEは約73%と、非常に高い水準です。これは、その会社の成長力の高さや、自己資本を効率的に活用して利益を上げていることを示しています。
アナリストのChisa Kobayashi氏(UBS SuMi TRUST Wealth Management)は、「2025年は日本株の次の10年のパフォーマンスを決定する年になる」と述べており、ROEのさらなる向上が日本市場全体の評価を高める鍵になると指摘しています。
2025年においては、単に借入でROEを高く見せるのではなく、本業での収益力を高めたり、採算の悪い事業を見直したりすることで、持続的にROEを改善していく企業が投資家からより評価されると考えられます。ROEが高い会社、そして今後ROEが改善していく見込みのある会社は、長期投資の対象として注目する価値があると言えます。
2. PER(株価収益率)で「株価の割安度・割高度」を知る
PERの定義と計算式
次に紹介する指標は、PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)です。PERは、今の株価が、会社の稼ぐ利益に対して何倍になっているかを示す指標です。これを見ることで、今の株価が会社の利益水準と比べて「割安なのか、それとも割高なのか」を判断する目安になります。
計算式は以下のようになります。
$$ \text{PER(倍)} = \frac{\text{株価}}{\text{1株当たり純利益(EPS)}} $$
「1株当たり純利益(EPS:Earnings Per Share)」とは、会社が稼いだ最終的な利益を、発行されている株式の数で割ったものです。株主さんが持っている株1株あたりに、どれだけの利益が割り当てられるかを示しています。PERが高いということは、株価がEPSに対して高い、つまり市場がその会社の将来の成長に大きな期待を寄せていると考えることもできます。逆にPERが低い場合は、株価がEPSに対して低い、つまり市場があまり大きな期待を寄せていない(割安と判断される可能性)と解釈されることがあります。
PERの目安と分析ポイント
PERの目安は、一般的に15倍程度が基準とされることが多いです。ソースによると、2025年の日本市場全体のPER平均は16.25倍と、過去5年の平均範囲(13.42-16.52)内にあり、歴史的平均と比べるとやや高めに見られます。基準としては、10倍以下は割安、10-15倍は公正、20倍以上は割高と判断されることが一般的です。
ただし、PERもROEと同様に、業種や会社の成長性によって適正な水準が大きく異なります。例えば、これからぐんぐん成長しそうな新しい技術を持つ会社やITサービスを提供する会社は、将来的に利益が大きく増えると期待されるため、今の利益に対して株価が高くても(PERが高くても)、投資家はその成長期待を織り込んでいると考えることができます。一方で、すでに成熟している業種の会社や、あまり大きな利益成長が見込めない会社のPERは低めになる傾向があります。
PERを見る際の注意点はいくつかあります。まず、赤字の会社の場合、EPSがマイナスになるためPERを計算することができません。また、特別な理由で一時的に利益が大きく増減した場合、その期のPERだけを見ると実態と異なる評価をしてしまう可能性があります。例えば、持っている土地を売却して多額の特別利益が出た場合などです。ですので、PERを見る時も、過去のPERの推移や、同じ業種の他の会社のPERと比較することがとても重要です。市場全体の平均PERや、日経平均株価のPER(2025年5月時点で約15.5倍です)なども参考にすると良いでしょう。
2025年の日本市場におけるPERの動向
2025年の日本市場では、PERは市場の期待度を映す鏡として引き続き注目されています。ソースによると、2025年度の予想PERを業種別に見ると、金融セクター(銀行、保険など)や建設業、不動産、非鉄金属といった業種は、全産業平均に対して割安な水準にあると分析されています。これは、これらの業種が今後の業績改善や市場からの評価見直しによって、株価が上昇する可能性があることを示唆しているとも言えます。
一方で、小売業や食料品などのディフェンシブセクター(景気に左右されにくい業種)は、元々PERが高い傾向があるため、相対的に割高に見えることがあります。また、ソースにあるように、三井住友DSアセットマネジメントは2025年12月末のTOPIX予想PERを14.2倍としており、別の予測では日経平均株価42,000円時点のTOPIX PERを15倍前後と見ています。あるアナリストは、2025年はインフレ環境下で名目収益率が上昇し、PERが17.58倍に達する可能性も指摘しています。
2025年の投資判断では、PERの絶対値だけでなく、それが会社の将来の利益成長に対して妥当なのかを考えることがより重要になります。金利が上昇する可能性がある局面では、将来の利益を現在価値に割り引く際に使う金利が高くなるため、PERが高い(将来の利益に期待している)会社の評価が厳しくなることもあります。PERが低いからといって安易に「買い」と判断するのではなく、なぜPERが低いのか(成長性が低いと見られているのか、一時的な要因かなど)を他の指標と合わせて分析することが大切です。
3. PBR(株価純資産倍率)で「資産からの評価」を知る
PBRの定義と計算式
3つ目の指標は、PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)です。PBRは、今の株価が、会社の持っている純資産(資産から負債を差し引いたもの)に対して何倍になっているかを示す指標です。
計算式は以下の通りです。
$$ \text{PBR(倍)} = \frac{\text{株価}}{\text{1株当たり純資産(BPS)}} $$
「1株当たり純資産(BPS:Book-value Per Share)」は、会社の純資産(自己資本とほぼ同じと考えて良いです)を、発行されている株式の数で割ったものです。この純資産は、もし会社が今すぐ解散して、持っている資産をすべて売り払い、借金をすべて返した後に、株主さんに残るはずの金額(理論上の解散価値)とも言われます。ですので、PBRは、市場がその会社の資産価値をどう評価しているかを見る指標と言えます。
PBRの目安と分析ポイント
PBRを見る上での最も重要な目安は、「1倍」です。PBRが1倍ということは、株価と1株当たり純資産が同じということです。PBRが1倍未満、つまりPBRが1倍割れの状態は、株価が理論上の解散価値を下回っていることを意味し、割安と見なされることがあります。
ソースによると、TOPIX(東証株価指数)のPBRは1.4倍程度で、これは市場が公正に評価されている水準と見られています。PBRの一般的な基準としては、0.5倍以下は極めて割安、0.5-1.0倍は割安、1.0-1.5倍は公正、1.5-2.0倍はやや割高、2.0倍以上は割高と判断されることが多いです。
PBRが1倍を超えている場合は、市場がその会社の資産価値だけでなく、将来の収益力やブランド力、技術力といった目に見えない価値(無形資産)も高く評価していると考えられます。逆にPBRが低い、特に1倍を割れている会社は、市場がその会社の将来性をあまり評価していないか、あるいは資産をうまく活用できていない(資本効率が低い)と見ている可能性があります。
PBRとROEは密接な関係があります。一般的に、「PBR = ROE × PER」という関係性が成り立つと言われています。つまり、ROEが高い会社は、必然的にPBRも高くなる傾向があるということです。PBRが低い会社は、ROEも低い(資本効率が悪い)場合が多いため、PBRが低い理由を探る上でROEを確認することが重要です。また、PBRは会社の「帳簿上の」純資産を元に計算されるため、土地や有価証券などの実際の時価(市場での価値)と帳簿上の価格に大きな差がある場合、PBRだけを見ても実態を反映していない可能性がある点には注意が必要です。
2025年の日本市場におけるPBRの動向と東証の要請
2025年の日本市場では、PBR1倍割れ企業に対する注目度が非常に高まっています。東京証券取引所は、株価が純資産を下回るPBR1倍割れの会社に対し、資本効率や株価を意識した経営改善の取り組みを強く求めています。そして、その具体的な対策を開示し、実行することを要請しており、2025年3月までには多くの会社が何らかのアクションを取っています。ソースによると、既に660社が改善に向けたアクションを起こしているとのことです。
この東証の動きを受けて、「PBRが低く、今後の改善に期待できる会社」が投資家から注目されています。ソースでは、PBRが低く改善が期待できる会社のランキングが注目されていることに言及されています。PBRが1倍割れしている会社の中には、眠っている資産を有効活用したり、稼ぐ力を高めたり、株主還元を増やしたりすることで、今後PBRが上昇していく可能性のある「お宝株」が隠されているかもしれません。
しかし、PBRが低いというだけで投資を決めるのは危険です。なぜ低いのか、その根本的な原因(例えば、本業の利益が出にくい、古い資産が多い、市場からの評価が低いなど)を見極めることが重要です。東証は単にPBR1倍やROE8%といった目安だけでなく、より多角的な視点での企業価値向上を求めているため、会社の具体的な改善策の中身もしっかり確認する必要があります。2025年も引き続き、PBR改善に向けた企業の取り組みとその進捗が、投資家にとって重要な判断材料となるでしょう。
4. ROA(総資産利益率)で「資産全体の効率」を知る
ROAの定義と計算式
4つ目の指標は、ROA(Return on Assets:総資産利益率)です。ROAは、会社が持っている全ての資産(借金も含む、自己資本と他人資本の合計)をどれだけ効率よく使って利益を稼いでいるかを示す指標です。
計算式は以下の通りです。
$$ \text{ROA}(%) = \frac{\text{当期純利益}}{\text{総資産}} \times 100 $$
「総資産」とは、会社が持っている現金、建物、土地、機械、商品、そして銀行からの借入金や社債など、全ての資産の合計です。ROAが高いほど、会社が保有する資産全体をうまく活用して、多くの利益を生み出せていると評価できます。
ROAと最初に出てきたROEは似ていますが、違う点があります。ROEの計算式の分母は「自己資本」でしたが、ROAの分母は「総資産」です。この違いが重要で、ROAは借入金(他人資本)も含めた全体の効率性を見るため、財務レバレッジの影響を受けにくいという特徴があります。ROEは株主から見た効率、ROAは会社全体の効率、と考えると分かりやすいかもしれません。
ROAの目安と分析ポイント
ROAの一般的な目安としては、5%以上が良いと言われることが多いですが、これも業種によって大きく異なります。例えば、たくさんの土地や建物、設備が必要な製造業やインフラ産業は、総資産が大きくなるためROAは低めになる傾向があります。一方、あまり物理的な資産を持たずにビジネスができるサービス業やIT企業は、総資産が小さいためROAは高めになりやすいです。銀行などの金融機関の分析では、ROAが特に重視されることがあります。
ROAが高い会社は、資産を効率的に運用できている会社だと言えます。例えば、同じ利益を稼いでいても、ROAが高い会社の方が、より少ない資産でその利益を上げていることになります。これは、在庫管理がうまい、工場の稼働率が高い、お金の回収が早いなど、事業運営が効率的に行われている可能性を示唆しています。
ROAを分析する際は、同じ業種の他の会社と比較することが基本です。また、ROAはROEと合わせて見ることが重要です。もしROEは高いのにROAが低い会社があったら、それは借入金をたくさん使ってROEを高めている(財務レバレッジが高い)可能性があります。財務の健全性を知る上では、ROAと自己資本比率を一緒に見ることが大切です。ROAは、売上高利益率(売上に対してどれだけ利益が出たか)と総資産回転率(資産をどれだけ効率よく売上につなげたか)に分解して考えることもできます(ROA = 売上高純利益率 × 総資産回転率)。これにより、会社の利益率が高いのが強みなのか、それとも資産をどんどん回転させて売上を上げているのが強みなのか、といったより詳しい分析ができます。
ROAとROEの関係性
ROAとROEはどちらも収益性を示す指標ですが、見る視点が異なります。
- ROA: 会社全体の資産(総資産)を使ってどれだけ利益を上げたか。
- ROE: 株主の自己資本を使ってどれだけ利益を上げたか。
この二つの指標の関係は、しばしば財務レバレッジという考え方で説明されます。財務レバレッジとは、借入金などの他人資本をどれだけ活用しているかを示すものです。
$$ \text{ROE} \approx \text{ROA} \times \text{財務レバレッジ} $$
もし会社がたくさん借入をしている(財務レバレッジが高い)場合、総資産に占める自己資本の割合は小さくなります。同じROA(資産全体の効率)であっても、自己資本が小さければROEは高くなります。つまり、借入を増やすことでもROEは向上する可能性があるのです。
ソースでは、具体的な2025年第1四半期のROAデータとして、台湾の半導体関連企業の全新(2455)が3.44%、Intelが-1.69%、Teslaが1.32%、中国のA株非金融企業の加重平均が6.26%というデータが示されています。これらのデータを見ると、業種や企業の状況によってROAは大きく異なることが分かります。
2025年は金利が上昇傾向にあるため、借入金のコストが増える可能性があります。このような状況下では、単に借入でROEを高めるのではなく、資産全体の効率(ROA)を高めることがより重要になります。投資家としては、ROEが高い理由がROAの高さ(本業での効率が良い)によるものなのか、それとも財務レバレッジの高さ(借入が多い)によるものなのかを、ROAと自己資本比率を合わせて見ることで判断できます。高ROAを安定的に維持している会社は、資産を有効活用しており、持続的な成長が見込める可能性が高いと言えます。
5. 自己資本比率で「会社の安全性」を知る
自己資本比率の定義と計算式
最後に紹介する指標は、自己資本比率(Equity Ratio)です。これは、会社の持っている全ての資産(総資産)のうち、返済する必要のない自己資本がどれくらいの割合を占めているかを示す指標です。この比率を見ることで、会社の借金への依存度や、財務的な安定性、つまり倒産しにくさを知ることができます。
計算式は次のようになります。
$$ \text{自己資本比率}(%) = \frac{\text{自己資本}}{\text{総資産}} \times 100 $$
自己資本には、株主さんが出資したお金や、会社がこれまで稼いで積み立ててきた利益(利益剰余金)などが含まれます。総資産は、会社が持っているすべての資産の合計です。この比率が高いほど、会社の借金が少なく、自己資本でしっかり支えられている状態なので、財務的に安定していると言えます。
自己資本比率の目安と分析ポイント
自己資本比率の一般的な目安は、40%以上が健全、50%以上なら優良企業と言われることが多いです。30%を下回ると、財務リスクが高いと見なされることがあります。例えば、ソースによると、トヨタ自動車は約48.7%、ソフトバンクグループは42.1%と、主要企業では40%以上の比率が見られます。しかし、この目安も業種によって大きく異なります。
例えば、銀行やリース会社のように、預金や借入金といった他人から預かったお金を元手にビジネスを行う業種は、構造上総資産が大きくなり、自己資本比率は低くなる傾向があります。逆に、多額の借入があまり必要ないビジネスモデルの会社や、利益をしっかり積み上げてきた会社は、自己資本比率が高くなります。物流企業のSBSホールディングスは、中期経営計画で自己資本比率25~30%を目標として掲げています。また、SBI新生銀行の2025年3月期第3四半期末の自己資本比率(国内基準)は9.79%でした。これらの例からも、業種による違いが大きいことが分かります。
自己資本比率が高い会社は、景気が悪くなったり、金利が上がったりといった外部環境の変化にも強いと言えます。借金が少ないので、金利の支払いに苦労したり、借金の返済に困ったりするリスクが低いからです。これは長期投資を考える上で、非常に重要なポイントです。
自己資本比率を見る上での注意点
自己資本比率が高いことは基本的に良いことですが、高すぎる場合にも注意が必要です。例えば、自己資本比率が極端に高いのに、ROAやROEといった収益性を示す指標が低い会社は、稼いだお金を有効に活用できていない(成長投資や株主還元に回せていない)可能性があります。会社にお金(自己資本)はたくさんあるけれど、それを元手にうまく利益を生み出せていない、ということです。これは資本効率が悪い状態と言えます。
また、成長途中の会社は、新しい事業に投資したり、設備を増やしたりするために、一時的に借入を増やして自己資本比率が低下することがあります。これは、将来の成長のための投資である場合が多く、必ずしも悪いことではありません。ですので、自己資本比率の数字だけでなく、その会社が今どんな成長段階にあるのか、借入金を何に使っているのかなども考慮して判断する必要があります。自己資本比率を見る時は、同じ業種の平均値と比較することが、その比率が高いか低いかを判断する上で役立ちます。
2025年は世界経済の不確実性も指摘されているため、企業の財務的な安定性は引き続き重要な評価ポイントとなるでしょう。自己資本比率が高い会社は、不測の事態に対する耐性が高いと言えます。ただし、自己資本比率が高いことだけを見て安心するのではなく、ROEやROAといった収益性や効率性の指標と合わせて、バランス良く会社の財務状況を評価することが大切です。
財務指標を組み合わせて賢く投資する
ここまで、ROE、PER、PBR、ROA、自己資本比率という5つの重要な財務指標について見てきました。それぞれの指標が、会社の「稼ぐ力」「株価の評価」「資産全体の効率」「財務の安全性」といった異なる側面を示していることが分かりましたね。
株式投資でより良い判断をするためには、これらの指標を一つだけ見るのではなく、組み合わせて多角的に分析することが非常に重要です。例えるなら、健康診断で体温だけを見ても健康状態は分かりませんが、体温、血圧、体重、血液検査などを総合的に見ることで、より詳しく体の状態を把握できるのと同じです。
例えば、PERが低いからといって「割安だ!」と飛びつく前に、その会社がなぜPERが低いのかを考えてみましょう。もしPERが低い理由が、ROEも低く(稼ぐ力が弱い)、ROAも低く(資産効率が悪い)て、さらに自己資本比率も低い(財務が不安定)といった理由なら、たとえ株価が安く見えても投資するのはリスクが高いかもしれません。
逆に、PERが少し高くても、ROEやROAが安定して高く、自己資本比率も健全な会社であれば、その高いPERは将来の成長への期待を反映していると考えられ、長期的に見れば投資価値があるかもしれません。ソースにあるように、2025年の有望業種として挙げられる「建設・資材」、「銀行」、「金融(除く銀行)」、「不動産」は、業績予想が堅調であるだけでなく、PERも割安な水準にあると分析されています。さらに、銀行や保険といった金融セクターでは、ROEやROAの改善も期待されているとされています。
つまり、収益性(ROE, ROA)、割安度(PER, PBR)、安全性(自己資本比率)という異なる角度から会社を評価し、バランスの取れた会社、あるいはこれから改善が見込める会社を見つけることが大切なのです。
2025年の日本市場の注目点と指標の活用
2025年の日本市場では、企業が「資本コストや株価を意識した経営」を進める中で、ROEやPBRの改善が引き続き重要なテーマとなっています。特に、PBRが1倍を割れている会社は、今後どのような具体的な改善策(稼ぐ力を高める、資産を有効活用する、株主還元を増やすなど)を発表し実行していくかに注目が集まります。
初心者投資家の方は、まず興味を持った会社のこれらの5つの指標を調べてみましょう。そして、同じ業種の他の会社の指標や、業界全体の平均値と比較してみることから始めてみてください。ソースでは、アナリスト予想が強気な会社の中で、PBRが低く改善に期待できる会社のランキングなども参考になるとされています。
また、経済の状況(例えば金利の変動や景気の動き)や、会社固有のニュースなども、これらの指標に影響を与えます。常に最新の情報にも注意を払いながら、指標を読み解く力を養っていくことが、賢い投資につながります。
結論:財務指標を投資の味方につけよう
この記事では、日本株の初心者投資家向けに、企業分析で特に重要な5つの財務指標、ROE、PER、PBR、ROA、自己資本比率について解説しました。それぞれの指標が示す意味や、計算方法、そして2025年の日本市場におけるポイントを理解することで、会社の健康状態や将来性を読み解く力がついたのではないでしょうか。
- ROEは、株主資本を使ってどれだけ利益を稼いでいるか。
- PERは、株価が利益に対して割安か割高か。
- PBRは、株価が資産価値に対して割安か割高か。
- ROAは、会社の全資産を使ってどれだけ効率的に稼いでいるか。
- 自己資本比率は、会社の財務的な安定性。
これらの指標は、単独で見るのではなく、必ず複数組み合わせて、過去の推移や同業他社との比較をしながら分析することが大切です。特に2025年は、企業が資本効率の改善(ROE, PBR向上)を強く意識した経営を進めることが期待されており、これらの指標が会社の評価や株価に与える影響が大きくなると考えられます。
将来のための資産形成に向けた長期投資では、投資する会社をしっかり選ぶことが成功の鍵です。今回学んだ財務指標は、そのための強力なツールとなります。ぜひ、興味を持った会社の財務諸表などで、これらの指標を実際に調べて、自分で計算してみたり、他の会社と比べてみたりしてください。実践を通じて、さらに理解が深まるはずです。
財務指標は、会社の「過去」や「今」の姿を映し出すだけでなく、その会社が「将来」どうなりそうか、というヒントもたくさん含んでいます。これらを味方につけて、自信を持って日本株投資に取り組んでいきましょう。

