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月35万円の生活費の人が無職FIREする方法(必要資産額は?)

月35万円の生活費で無職FIREする方法

FIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期リタイア)は多くの人にとって魅力的な目標です。この記事では、月35万円(年間420万円)の生活費を想定し、無職FIREを実現するために必要な情報を、最新のデータに基づいて具体的に解説します。

この記事でわかること

  • 月35万円の生活費でFIREするために必要な資金額(税金考慮)
  • 月35万円のリアルな支出モデルケース(社会保険料込み)
  • 65歳以降、年金収入がある場合の必要資金額

FIREに必要な資金額は?【年利7%・4%ルール・税金考慮】

FIREに必要な資金額を計算する上で、「4%ルール」が広く知られています。これは、年間支出の25倍の資産を築けば、年利4%で資産を取り崩しても資産が目減りしにくいという考え方です。

今回は、以下の前提条件で計算します。

  • 目標生活費(税引き後手取り): 月35万円(年間420万円)
  • 投資リターン: 年率7%を想定
  • 取り崩しルール: 4%ルールを採用
  • 資産の含み益: 50%と仮定(資産全体のうち、利益が1/3を占める状態)
  • キャピタルゲイン税: 20%(※正確には20.315%ですが、計算簡略化のため20%とします)

計算ステップ:

  1. 税引き後420万円を得るために必要な税引き前取り崩し額を計算:
    • 取り崩す際、利益部分(全体の1/3)に20%の税金がかかります。
    • 税引き後手取り額 = 税引き前取り崩し額 – (税引き前取り崩し額 × 利益割合 × 税率)
    • 420万円 = X – (X × 1/3 × 0.2)
    • 420万円 = X – (0.0667 × X)
    • 420万円 = 0.9333 × X
    • X = 420万円 ÷ 0.9333 ≒ 450万円
    • つまり、税金を考慮すると、年間約450万円を資産から取り崩す必要があります。
  2. 4%ルールに基づき、必要な資産元本を計算:
    • 必要な資産額 = 年間取り崩し額(税引き前) ÷ 4%
    • 必要な資産額 = 450万円 ÷ 0.04 = 1億1,250万円

結論:

年利7%のリターンを期待し、含み益50%の資産から税金(20%)を考慮して年間420万円(月35万円)の生活費を4%ルールで取り崩すためには、約1億1,250万円の資産が必要となります。

注意点:

  • 投資リターンの不確実性: 年7%のリターンはあくまで仮定であり、常に保証されるものではありません。市場の変動リスクを考慮する必要があります。
  • 税制変更リスク: 税率は将来変更される可能性があります。
  • インフレリスク: 物価上昇により、将来的に月35万円の価値が下がる可能性があります。インフレ率も考慮した計画が必要です。(後述)

月35万円の支出モデルケース(無職FIREの場合)

月35万円の生活費は、どのような内訳になるでしょうか。ここでは、都市部在住・単身・賃貸を想定したモデルケースを作成します。無職FIREの場合、会社の社会保険から外れ、国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。

費目金額(月額目安)備考
住居費120,000円家賃・管理費など(都市部を想定)
食費60,000円自炊中心+外食
水道光熱費15,000円電気・ガス・水道
通信費10,000円スマートフォン、インターネット回線
社会保険料47,000円国民年金(約17,000円) + 国民健康保険(約30,000円) ※下記参照
税金15,000円住民税 ※下記参照
交通費10,000円公共交通機関、ガソリン代など
趣味・娯楽費30,000円旅行、書籍、習い事など
日用品・雑貨10,000円
被服費10,000円
医療費・保険10,000円医療費自己負担分、任意保険など
交際費10,000円
その他雑費・予備費3,000円
合計350,000円

【重要】社会保険料・税金について

  • 国民年金: 令和6年度の保険料は月額16,980円です。(日本年金機構より)
  • 国民健康保険:
    • 非常に注意が必要な項目です。 保険料は前年の所得や資産、お住まいの自治体によって大きく異なります。
    • FIRE直後は前年の会社員時代の所得で計算されるため、高額になる可能性があります。
    • 所得が投資の利益のみになった場合でも、多くの自治体ではその利益(分離課税分含む)を基に保険料が計算されます。
    • 上記モデルケースの月3万円はあくまで仮の金額です。必ずお住まいの自治体の窓口やウェブサイトでご自身の状況に合わせて試算してください。
  • 住民税:
    • こちらも前年の所得に基づいて計算されます。FIRE直後は高額になる可能性があります。
    • 投資の利益(分離課税)に対しても住民税(5%)がかかります。
    • 上記モデルケースの月1.5万円も仮の金額です。こちらも自治体への確認が必須です。

支出モデルの注意点:

  • これはあくまで一例です。ライフスタイル、居住地、家族構成などによって金額は大きく変動します。
  • 予備費が少ないため、突発的な出費(家電の故障、冠婚葬祭など)に備える余裕も考慮する必要があります。

65歳以降の見通し:年金収入がある場合

65歳になり、公的年金などの収入が月6万円(年間72万円)入るようになった場合、資産はいくらまで減っても大丈夫でしょうか。

前提:

  • 65歳以降も生活費は月35万円(年間420万円)で変わらないと仮定(インフレ非考慮)。
  • 投資リターン、取り崩しルール、税金の条件はFIRE開始時と同じ。
  • 年金収入: 月6万円(年間72万円)

計算:

  1. 年金収入でカバーできない年間支出額(税引き後):
    • 420万円(年間生活費) – 72万円(年間年金収入) = 348万円
    • この348万円を、引き続き資産取り崩しで賄う必要があります。
  2. 税引き後348万円を得るために必要な税引き前取り崩し額:
    • 計算方法は FIRE時と同様です。
    • 税引き前取り崩し額 = 348万円 ÷ (1 – 1/3 × 0.2) ≒ 372.9万円
  3. 65歳時点で必要な資産額(4%ルール適用):
    • 必要な資産額 = 372.9万円 ÷ 0.04 = 9,322.5万円

結論(インフレ非考慮の場合):

65歳から月6万円の収入が見込める場合、月35万円の生活を維持するためには、65歳時点で約9,323万円の資産があれば良い計算になります。FIRE開始時に1億1,250万円あった資産が、ここまで減少しても理論上は生活を維持できることになります。

インフレリスクの考慮:

上記の計算はインフレ(物価上昇)を考慮していません。仮にFIRE開始から65歳までの期間が長く、年率2%程度のインフレが続くと、65歳時点での「月35万円相当」の生活費は、名目上もっと高額になっている可能性があります。

  • 例:40歳でFIREし、65歳までの25年間で年2%インフレした場合、65歳時点の月35万円相当の生活費は約57.4万円(年間約689万円)になります。
  • この場合、65歳時点で必要な資産額は約1億6,525万円となり、インフレ非考慮の場合(約9,323万円)より大幅に増加します。

FIRE計画においては、インフレをどの程度見込むかが非常に重要です。

FIRE実現に向けたポイント

月35万円生活のFIREは、相当な資産額が必要であり、簡単な道のりではありません。実現のためには以下の点が重要です。

  • 収入の最大化: 給与収入や副業で、できるだけ多くの資金を投資に回す。
  • 支出の最適化: 継続的に家計を見直し、無駄な支出を削減する。
  • 長期的な投資戦略: リスク許容度に合わせた適切なポートフォリオで、複利効果を活かしながら長期的に資産を増やす。
  • リスク管理: 市場の暴落、自身の健康問題、予期せぬ大きな出費など、様々なリスクに備える(十分な現金クッション、保険の活用など)。
  • 情報収集とシミュレーション: 特に税金や社会保険料は制度変更もあり、計算も複雑です。常に最新情報を収集し、ご自身の状況に合わせた正確なシミュレーションを行うことが不可欠です。

まとめ

月35万円(年間420万円)の生活費で無職FIREを実現するには、税金や社会保険料を考慮すると約1億1,250万円という多額の資産が必要です。また、月35万円の支出には、国民健康保険料や住民税といった、会社員時代とは異なる負担が含まれることを理解しておく必要があります。

65歳以降に年金収入(月6万円と仮定)があれば、必要な資産額は約9,323万円まで下がりますが、これはインフレを考慮しない場合の計算です。インフレを見込むと、さらに多くの資産が必要になる可能性があります。